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あっせん利得罪【あっせんりとくざい】

★口利きは、与党政治家のサイドビジネスの王道


  週刊文春の告発記事から表沙汰となった、甘利明大臣(当時)の口利きスキャンダル。目下のところ、検察のレベルでは嫌疑不十分での不起訴処分となっていますが、予想通り、検察審査会への申し立てがあり、最終的にどうなるかはまだわかりません。ここでの嫌疑の根拠となったのが、2000年に特別法で新設された「あっせん利得罪」でした。


 あっせん利得罪は、簡単に言えば、政治家の口利きを対象とするものです。日本では、口利きは与党政治家のサイドビジネスの王道で、人によっては本業と言ってもよいくらいです。実際、市議・県議からの叩き上げ陣笠議員のような場合、元々、各レベルでの自治体行政を巡っての利権漁りの積み重ねで議員バッジを手に入れたようなケースも多く、議会での仕事はヤジと議決の頭数ぐらい、あとは与党議員の「顔」を現金化するお仕事がメインとなったりします。


 政治家の口利きというのは、顔が利きそうなところに話をつなぐのが基本で、対価は金のこともあれば、票、あるいは別の協力行為のこともあり、また、働きかけの対象も、そもそもは公行政に限ったものでもありません。しかし、企業への働きかけなどは、基本的に自由競争と企業活動の問題ということで、本罪の対象からは外れています。また、行為者についても、国会・地方議員、国会議員の公設秘書、自治体首長に限定されており、私設秘書は除外されています。そのため、口利きの結果、行われた行政行為の合法・違法は問わないものの、議員であれば本人か公設秘書が口利きをし、成功報酬を受け取るという狭い枠に入ってこないと、有罪にはなりません


 私設秘書が除外された理由としては、収賄罪など他の要件とのバランスに配慮したとか、あっせん利得罪は問題の行政行為が合法でも成立すること、議員本人の関与があれば、共犯の成立する余地は別にあることなど、もっともらしい説明が並べられてはいます。しかし、私設秘書を除外した真の理由は、規制の実効性を大きく低下させる「ザル化」にあるというのが、大方の一致するところです。


 実際のところ、有力議員などは秘書が10人を超えることも珍しくなく、3人しかいない公設秘書にわざわざヤバい仕事をさせる必要はありません。ただ、最近は長引く不況の影響で企業献金も細ってきており、議員の懐具合も苦しくなってきています。そのため、議員一人当たりの秘書数も減ってきており、かつては私設秘書しかやらなかったような仕事も、公設秘書に回ってくるようになったり、議員からの小遣いが減った分を、公設秘書が自分で稼いだりするケースも増えているようです。こうして議員の資金プールの「水位」が下がった結果、十年前ならザルだった法に引っかかってしまう事例もちらほら出始めてきたというのが、今回の事件の一側面であります。



文・土屋彰久(政治学)