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衆議院の解散【しゅうぎいんのかいさん】

★解散の腹算・・・「もり・かけ」問題から逃げるためというのは半分ハズレ


  2017年9月、安倍首相が唐突にぶち上げた解散に、野党は当然のこととして、与党の一部からも疑問の声が上がりました。リアルタイムで読んでいる人には、なんの説明も要らないでしょうが、数年後に振り返った時にもわかるように、まず状況を簡単に記しておきましょう。


 反知性主義が、イデオロギーとして政治的に重要な意味を持つようになったのは、アメリカが始まりでした。


 安倍政権は、共謀罪をゴリゴリ押しまくりで成立させた通常国会の最中から、いわゆる「もり・かけ」問題で苦境に陥っていました。国会内で与党は3分の2を越える圧倒的多数を占めながらも、首相夫人が名誉校長に就いていた設立予定の私立小学校(もり)や、首相の「腹心の友」が理事長を務める大学(かけ)に行政側が尋常ならぬ便宜を図った疑いを野党側に徹底して追及され、支持率を大いに低下させていました。


 そんな中、都議選があり、自民党を離党した小池都知事が、地域政党「都民ファーストの会」を設立、与党への批判票の受け皿となり、自民党は歴史的惨敗を喫しました。一方、自民党に輪をかける惨敗を喫したのが民進党で、蓮舫代表の引責辞任を受けて行われた代表選では、共産党との共闘に否定的な前原新代表が選出されました。
 これは、自民党にとっては、逆算すれば最も有利な解散のタイミングでした。支持率の低下ぶりを見れば、議席減は必至です。ですが、解散時期が遅くなればなるほど、もっと議席の減り幅は大きくなります。簡単に言えば、任期満了まで一日に一議席減っていく呪いを魔女にかけられたようなものです。そこから逆算していくと、どれだけ減ったとしても、相対的には議席の減少を最小限に抑えられる今が最適という計算に落ち着きます。


 それは、都民ファーストの圧勝は公明党と連携しての結果であり、国政でその構造が再現されると、連立相手の公明党が野党側に移ってしまうため、そこまで話が転がらないうちに選挙をする必要があるというのが、まず一つあります。そしてもう一つは、野党第一党の民進党が、絶望的な不人気ぶりにあえぎながら、それでも共産党とは組まないとなると、与党の批判票はどうしても分散してしまうということです。この二つを踏まえると、衆院選の前哨戦としての都議選で、与党は大逆風を受けながらも、都民ファースト以外には勝っているように、それを衆院選の小選挙区に焼き直せば与党の勝利は確定です。


 これが正味の動機です。「消費増税の使途を変更するから」などという表向きの口実ですが、もっともらしいと言えるレベルにすら届いていません。「もり・かけ」問題から逃げるというのは、半分ハズレです。逃げたかったのは、それを追及され続けた挙げ句の選挙の方です。解散の時点では、与党で過半数という噴飯ものの勝敗ラインまで設定していたように、大幅な議席減まで想定していました。新国会では野党の議席増を反映してさらに厳しい追及が予想されるので、逃げるどころじゃありませんし、展開次第では首相退陣まで視野に入ってきます。結果的には、希望の失速で与党圧勝となり、「もり・かけ」逃げ切りのオマケもつきそうですが、身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれということでしょうか。 



文・土屋彰久(政治学)  2017.10.17