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マイナス金利【まいなすきんり】

日銀のマイナス金利政策は、サプライズ効果が消え、早くも手詰まり


  マイナス金利政策というのは、日銀に置かれる銀行他の当座預金について、法定準備預金の額を超えて預けられる預金(超過準備)について、利息を取るというものです。利息を付けないという、おなじみのゼロ金利政策からさらに一歩進めたとも、一歩踏み越えたとも言える政策で、欧州ではすでに採用例があります。


 でも、教科書的な説明はこのへんでやめておきましょう。そもそも、世の中の実体経済が教科書のようにはならないから、こんな政策が出てきたわけでして、経験的に考えれば、その政策が教科書通りの効果を上げるわけありません。実際、本家本元の日銀サイトを見てみると、「5分で読めるマイナス金利」というページがありますが、ほとんど、投資詐欺か新興宗教の勧誘マニュアルかと思うような内容のQ&Aが並んでいます。


 とは言え、いい悪いは別として、どんな政策にもそれなりに意味や効果はあるので、実体はきちんと見ておく必要があります。流れ弾だって、よけなきゃ死にます。まず一つ、踏まえておくべきことは、欧州の先行事例とは諸条件が違いすぎるので、その違いに留意せずに同列に論じる話は、かなり眉唾物だということです。


 たとえば、ユーロ圏では、(準備預金は各国中央銀行が引き受けるため)ECBの当座預金全額にマイナス金利が課され、その金利も現行(2016/12)で-0.4%と大きく、追い出し効果が強く働きますが、日本では準備預金には利息が付きますし、現在のところ、マイナス金利の幅も小さく超過預金の量も少ないので、通算ではまだプラスになります。また欧州の銀行は、まず口座維持の手数料を取った上で預金金利と通算しますので、金利次第で一般顧客にもマイナス金利が波及しますが、日本では預金手数料はとられませんので、すでにほぼゼロの金利がさらにゼロに近くなるだけです。


 また、護送船団方式が続く日本では政策金利と市中金利の機械的連動性が強く、日銀がマイナス金利を取ると、自動的に銀行の預金金利も貸出金利も下がりますが、各銀行の自律性が高い欧州の場合、ECBのマイナス金利で銀行の収益が減ると、その減収分を補うために手数料や貸出金利が上がるという逆効果が発生することもあります。逆に言えば、それくらいでないと実体経済にインパクトは与えられないとも言えます。実際、日銀のマイナス金利政策については、サプライズ効果が消え、機械的連動による市中金利低下の効果だけになりつつある中、早くも手詰まり感が漂ってきています。


 これは、「金利が下がれば人々は金を借りる」という、すでに過去のものとなった前提にしがみついていることが根底にあります。ただ、日銀もその自覚がないわけではなく、そう信じ込んでいるふりをしなければ、破綻の先延ばしさえできないという苦しい事情もあります。


次項では「マイナス金利と住宅ローン減税」を解説します。



文・土屋彰久(政治学)