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小選挙区制【しょうせんきょくせい】

★過半数から支持されないのに政権を独占できる制度


  安倍政権は、三度の国政選挙で圧勝を重ねてきた。しかし、支持率や得票率の推移をみるならば、有権者の過半数の支持さえ受けていないのが実態である。裏返せば、有権者の過半数が支持しない勢力が、政権を独占し続けているということである。こうした状況が続いたことで、小選挙区制の問題性にも少しずつ関心が向かってきている。


 日本では、小選挙区制は政治改革を口実として、非自民連立政権の下で導入された。以前から、自党に一方的に有利になるということで、自民党の手で何度か導入が試みられたことはあったが、そのたびに野党の必死(実際に必ず死ぬので)の抵抗で回避されてきた。それを、非自民政権にやらせたやり口は非常にうまかった。


 実際には、非自民といっても、首相の細川護熙や政権中枢の小沢一郎など、中身は自民離党組が中心であり、小選挙区制実現のための別働隊という指摘は当時からあった。いまから思うと、自民党の策謀というより、アメリカの指示で官僚がシナリオを描いたと考えたほうが納得がいく。中選挙区制だと、自民党の候補同士の争いになって、金権選挙になりやすいが、小選挙区制だと一党一候補なので政策本位の選挙になるから健全だ、などというでたらめな説明を、どのメディアも判で押したように垂れ流していたが、これも御用学者か官僚の作文らしい。


 しかし、投票結果を歪める方向にしか働かない小選挙区制は、根本において健全な民主政治と相容れることはない。よく小選挙区制の成功例のようにいわれるイギリスだが、最近では二大政党の得票率は低下しており、第3党以下の議席獲得が投票率に比べて過小になる一方、第1党ですら過半数に届かない事態も発生し、政権の正当性が問われ始めている。


 小選挙区制が良好に機能するのは、根本的には少数の支配層の間で、利益確保という共通の目的のためにどのような手段を採るかを迅速に決定する必要がある場合に限られる。イギリスで小選挙区制が機能していたのは、大英帝国として世界の覇権を握り、広大な植民地を保有していた時代までである。


 当時のイギリス人は支配国の国民として植民地経営の利益を共有していた。イギリスを継いで覇権国となったアメリカも、その軍事力を背景とした海外からの所得移転で国内の人口を養っているという基本構造は同じである。そして、アメリカに貢がせるため、間接支配を安定化させる道具として小選挙区制が導入されている属国群においては、それは逆に国益流出のツールと化している。TPP参加国でも、小選挙区制が圧倒的である。


 日本では、野党の民主党が最も小選挙区制にこだわるという奇妙な状況が続いている。いまの政治状況では、そして今後もかなりの確度で、小選挙区制は野党第2党以下の議席を自民党に貢ぐ制度として機能する。議席配分という最も重要な問題で、野党第1党が政権与党に味方する状況で、まともに野党共闘が成立するわけがない。



文・祖父屋浩(社会学)   2015.10.31